ファンタジーで初恋なアニメ映画ランキング 4

あにこれの全ユーザーがアニメ映画のファンタジーで初恋な成分を投票してランキングにしました!
ランキングはあにこれのすごいAIが自動で毎日更新!はたして2024年11月09日の時点で一番のファンタジーで初恋なアニメ映画は何なのでしょうか?
早速見ていきましょう!

80.5 1 ファンタジーで初恋なアニメランキング1位
蛍火の杜へ(アニメ映画)

2011年9月17日
★★★★☆ 4.0 (1074)
5217人が棚に入れました
祖父の家へ遊びに来ていた6歳の少女・竹川蛍は、妖怪が住むという山神の森に迷い込み、人の姿をしたこの森に住む者・ギンと出会う。人に触れられると消えてしまうというギンに助けられ、森を出ることができた蛍は、それから毎年夏ごとにギンの元を訪れるようになる。

声優・キャラクター
内山昂輝、佐倉綾音
ネタバレ

てけ さんの感想・評価

★★★★★ 4.5

恋は儚い人の夢

「夏目友人帳」の緑川ゆきが原作で、同作品のアニメスタッフによって作成された短編映画です。


恋は儚い人の夢。
蛍の様に光り、白銀の雪のように輝き、やがて……。


誰もが開始3分で「あっ……これは」と思うはず。
分かってるんですよ、分かってるのに30分後には泣いている私がいる。


蛍は裏表のない、明るくも利発な女の子。

ギンは雰囲気こそ神秘的なものがあります。
しかし、その行動は迷い、恋し、決断する、真っ直ぐな男。

ピュアなキャラによるピュアなラブストーリーです。


{netabare}気軽に触れられる{/netabare}男子生徒。
蛍から{netabare}のプレゼントのマフラーを身につける{/netabare}ギン。
二人が{netabare}会えない季節も{/netabare}どんどん距離が縮まっていく。
ちょっとしたシーンにも説得力がありますね。

夏のイメージが強い本作ですが、冬があるからこその夏。
それが夏の風物詩である「蛍」と冬のイメージがある「ギン」という名前に込められた意味なのかもしれません。


そしてラスト。
涙が止まらない。

{netabare}
お面越しのとてもとても美しいキス。
その後ギンは転びそうになった人間の男の子に触れてしまいます。

「来い、蛍。やっとお前に触れられる」

お面の向こうの蛍の顔はそれまでにないほどの笑顔でした。


……でもね、これは事故ではないんです。
何年も何十年もお祭りに参加しているギンが、うっかりミスをするとは思えない。

「何があっても、私に触らないでね」

この約束がある限り、ギンも蛍も直接お互いに触れることはできません。

そして、後の妖怪の言葉。

「ギンはやっと人に、触れたいと思ったんだね」

つまり、これはギンの意志だったわけです。

確固たる意志を持っていたわけではないのかもしれません。
しかし、ギンは、蛍との約束を破ることなく、罪悪感を残すこともせず願いを叶えたかった。

そのためにギンは事故を装い、{netabare}「人の手というチャンス」{/netabare}を掴んだのでしょう。
{/netabare}


わずか45分という短くシンプルなストーリー。
それでいながら洗練されていて、温かさ、切なさ、色んな感情が溢れてきます。

美しいお話で完成度が高く、今まで見たアニメ映画の中では一番。
本当に大好きな作品です。

投稿 : 2024/11/09
♥ : 140
ネタバレ

takumi@ さんの感想・評価

★★★★★ 4.6

出逢ったのが彼女で良かった

『夏目友人帳』でおなじみのスタッフでおくる50分ほどのアニメ映画で、
なんともせつない、だけど心にやさしくしみるお話。

主な登場人物を公式サイトから抜粋すると


〔ギン〕
山神の森に住むキツネの面をかぶった少年。

〔竹川 蛍〕
6歳の時 森で迷子になったところをギンに助けられて以来、
彼に懐き、毎年の夏 彼のもとへ通うことになる少女。


ある夏、妖怪たちが住むと言われている山神の森で迷子になった蛍。
泣いているところを助けてもらったのが、ギンとの出会い。

それ以来の毎夏 森で逢うことを重ね、強く惹かれ合っていくのだが、
人でも妖怪でもないというギンには
「人に触れると消失してしまう」という掟のようなものがあり、
互いに触れ合えないまま蛍だけが高校生へと成長し、
やがてふたりは・・・というお話。

触れ合えないという大きな枷があるせいで、
手を繋ぐことも、抱きしめることもままならない関係。
蛍がまだ幼さの残る少女だった頃は面白おかしく描かれるのだけれど、
中学、高校へと成長していく彼女の、彼への想い方や、
お互いの向き合い方の変化、そしてなんとも初々しい二人の逢瀬など、
丁寧にきめ細やかに描かれていくので、
観ているこちらはもどかしくも切ない想いに駆られる。

このお話は詳しく書いたら野暮なのであまり書けないが、
{netabare}
ギンの正体の真相というか素性に加え、
胸が苦しくなるような出来事が起きた後の妖怪たちの言葉に、
{/netabare}
「あぁ・・・そういうことだったのか」と
山神様がかけた術の本当の意味がわかり、
こらえていた涙がどっとあふれてしまった。

雰囲気的には、『夏目友人帳』1期の8話「儚い光」や
3期の4話「幼き日々に」に近いテーマを感じた。

せつないけれど、悲しいのとは違う温かさ。
妖怪たちや山神の純粋でやさしい想いと、ギンへの愛情。
それらは、観る前に想像していた以上のもので。

また、これは2回以上観るとすぐに気づけるのだが、
蛍の選んだ道がわかる部分にも、ほっとできて。
とても良い後味と、しっとりした余韻に、
エンドロールがなくなってもなお、みつめ続けてしまうほどだった。

満天の星がきらめく夜空や、緑深い森に流れる木漏れ日のようなピアノ曲や
少しとぼけた感じのオルガンのメロディーも、
ふんわりとしたこの作品の空気感を盛り上げてくれる。

現実的に考えれば、少女がたった一人で森に行くというだけで
事件が起きそうな不安がよぎるし、ましてやギンなんて不審者扱いを受けそうな
今の世の中なのに、なんて平和なんだろう・・と。
観ていると・・・のどかでゆったりしていた時代が恋しくなる。

そして個人的に、ずっとずっと大切にしておきたい愛すべき作品の1つです。

投稿 : 2024/11/09
♥ : 81
ネタバレ

cross さんの感想・評価

★★★★☆ 3.7

儚い恋の始まりから終わりを短い時間の中で纏め上げた感動作品【総合評価:77点】

2011年9月に放映された作品。

夏目友人帳の原作、緑川ゆきの短編をこれまた夏目友人帳のスタッフが作り上げた作品です。
夏目友人帳のスタッフが手掛けていますんで、雰囲気、絵、音楽、更には人間と妖怪の心の触れ合い、どれをとっても夏目友人帳を彷彿とさせます。

人に触れられると消えてしまうという妖怪のギン
祖父の家に遊びに来て、森の中でギンと出会った少女蛍。
とある夏の日に森に迷い込んだ蛍と森に住まうギン、二人の偶然の出会いから、徐々に恋へと移り変わる10年に渡る物語
祖父の家に訪れる夏の間の数日だけ会う約束をする二人。
子供から徐々に大人になるにつれ、ギンへの想いが強くなる蛍。
出会った時から、全く姿は変わらないもののギンも徐々に蛍に心を許していく。

触れさえしなければ、何時までもそこに居てくれるギン。
しかし、成長していく自分に対してギンはほとんど成長しない。
いずれ自分がギンの歳を追い越してしまうのか?
そんな不安を抱えながらも、はやく夏になって欲しい、ギンに早く会いに行きたい。
思春期を迎える蛍は、日々そんな風に考えるようになっていく。

蛍とギン、触れ合うことは出来ずとも心の距離を会う度に縮めていった二人の心情がとても丁寧に描かれています。
展開としては非常にシンプルで時間も50分と言う短い作品ですが、それでもラストでしっかりと感動できたのは、やはり二人の心情描写をしっかりと描けていたからでしょう。

{netabare}そして迎えるラストシーンではもう感動せずに入られませんね。
時を重ね、互いへの思いを深めていった二人が最後の最後に抱き合うシーン
消え行く中でも、今まで触れたくても触れる事が出来なかった蛍へと触れられる喜びに「やっとお前に触れらる」と顔をほころばすギン
そして、最後の最後にギンに触れ、残されてしまう蛍に、今まで蛍とギンを温かく見守って来ていた妖怪達の「ありがとう」と言う言葉にも感動でした。
何というか、本当にギンは幸せの中で消えていったんだなぁと感じさせられました。{/netabare}

予想に容易い展開ではありましたが、切なくも儚い展開には感動を抑え切れませんでした。
視聴後、非常に心温まるとても素晴らしい作品、夏目友人帳が好きな方なら、絶対に楽しめると思います。
終始、暖かく優しい展開、それでいて夏目友人帳以上に心情描写を丁寧に描いている様に思えます。
それ故にラストでの感動は、寧ろ、夏目友人帳を超える作品ではないかと思います。
是非とも一度視聴してみる事をオススメ致します。

投稿 : 2024/11/09
♥ : 60

88.0 2 ファンタジーで初恋なアニメランキング2位
青春ブタ野郎はゆめみる少女の夢を見ない(アニメ映画)

2019年6月15日
★★★★★ 4.1 (566)
2955人が棚に入れました
空と海が輝く街“藤沢"に暮らす梓川咲太は高校二年生。先輩で恋人の桜島麻衣と過ごす心躍る日常は、初恋の相手、牧ノ原翔子の出現により一変する。何故か翔子は「中学生」と「大人」がふたり存在しているのだ。やむなく翔子と一緒に住むことになった咲太は「大人翔子」に翻弄され、麻衣との関係がぎくしゃくしてしまう。そんな中、「中学生翔子」が重い病気を患っていることが判明し、咲太の傷跡が疼き始める――。

声優・キャラクター
石川界人、瀬戸麻沙美、水瀬いのり、東山奈央、種﨑敦美、内田真礼、久保ユリカ
ネタバレ

shino さんの感想・評価

★★★★☆ 3.7

愛しさはずっと前から

「さくら荘」の鴨志田一、
CLOVERWORKS制作。

思春期症候群なる不思議な現象に、
心揺れる少年少女の青春ファンタジー劇場版。

藤沢に暮らす高校2年生の梓川咲太は、
恋人の桜島麻衣と心踊る日々を過ごしていた。
{netabare}そんな咲太の前に初恋相手の牧之原翔子が現れる。
しかもこの世界に翔子はなぜか、
大人、子供の2人が同時に存在していた。
翔子という2つの存在の謎、{/netabare}
咲太の胸の傷跡の秘密が今明かされる。

様々な物理現象をライトモチーフにして、
青春の甘酸っぱさともどかしさが、
不思議な世界で同居する物語はここでも健在。
崇高な超ひも理論とひも野郎理論に苦笑。

小さい頃から病弱な女の子翔子、
{netabare}確実に訪れるかわからない未来の姿に、{/netabare}
思い悩み生きているか弱き少女である。

時間と記憶が物語の鍵を握る。
{netabare}人は人生をやり直せば、
同じ幸せを得られるのだろうか。
大事な思い出を全て捨ててまでも、
やり直す価値を持つものとは何であろうか。{/netabare}

そこに思いやりと覚悟を見たとき、
幾多の人との出会いが身に染みるのです。

投稿 : 2024/11/09
♥ : 70
ネタバレ

ぺー さんの感想・評価

★★★★★ 4.2

ブタ野郎見あたらないんですけど?

原作は相変わらず未読


もともと13話で構成されたTV版は原作小説をほぼ刊行順に並べたもの。

※TV版構成表
{netabare}1-3話  第1巻「青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない」
4-6話  第2巻「青春ブタ野郎はプチデビル後輩の夢を見ない」
7-8話  第3巻「青春ブタ野郎はロジカルウィッチの夢を見ない」
9-10話  第4巻「青春ブタ野郎はシスコンアイドルの夢を見ない」
11-13話 第5巻「青春ブタ野郎はおるすばん妹の夢を見ない」{/netabare}
※劇場版構成表(今回のやつね)
{netabare}本編  第6巻「青春ブタ野郎はゆめみる少女の夢を見ない」
    第7巻「青春ブタ野郎はハツコイ少女の夢を見ない」{/netabare}

TV版の続きであり、おそらくブタ野郎シリーズ中盤のピークとなるだろう今回の劇場版。
そしてこの劇場版を経てもなお原作ストックありの状態で道半ば。2期を期待したいところですね。

TV版で「なんかと似てる」と嫌気された方はおそらくこの場にいないと思います。
そちらを踏まえてる方か、当時の私のように元ネタ良く知らずにベタ展開の持つ力強さに心地よく踊った方が映画まで観ようとしてるはずです。むしろTV版を楽しんだ方は必見であると断言可能です。


牧之原翔子(CV水瀬いのり)と桜島麻衣(CV瀬戸麻沙美)のWヒロインでございます。
思い出してください。TV版での麻衣先輩のヒロイン力は無双でした。1~3話最初のエピソードがピークだった私の趣味も影響してるかもしれませんが(^_^;) 大黒柱ヒロインがしっかりしてるので、サブヒロイン達が自由に遊べてたのです。彼女らの魅力も引き立つ幸福な関係でした。それが、

 メイン - サブ

ではなく

 Wヒロイン

麻衣先輩が相対的に弱まったわけではありません。麻衣先輩の強靭さはそのままで、牧之原翔子が肩を並べたのです。これだけで観る価値ありでしょう。
かつサブヒロイン達も、TV版のネタをちょいちょい絡めながら本編にも影響を及ぼしてきます。

※サブヒロインズ
 双葉理央(CV種﨑敦美)
 古賀朋絵(CV東山奈央)
 豊浜のどか(CV内田真礼)
 梓川花楓(CV久保ユリカ)


内容に少し触れとくと 「どシリアス」 でした。しかもほぼ全編。
梓川咲太(CV石川界人)がブタ野郎ぶりを発揮する機会が無くて残念です。なにがブタ野郎なのかはTV版でもよくわかりませんでしたけどね。
ついでに双葉が言うところのブタ野郎通り越してゲス野郎ぶりもおそらく無縁だったかと思います。


89分とありますがそれよりも長く感じましたかね。
個人的なツボもありまして、麻衣さん一辺倒から崩しの入った咲太を拝められたの意外性があって良かったです。そう、翔子さんと麻衣さんとで揺らぐ咲太。



■青ブタⅤ~○○の花嫁~!?

ドラクエでいうところのビアンカかフローラ選ぶやつですね。なんとなく頭に浮かんじゃいました。
FFでも7でティファかエリアスを選ばなきゃいけなかったりしますがそっちはややマイナーです。

{netabare}映画が原作第5巻の話でしたらレビュータイトル決定だったのですがずれてたので断念。{/netabare}

ただ気づきもありましてですね。※重度ネタバレ

{netabare}両方助かる世界線を見つけちゃった八方収まりの良いハッピーエンドで良かった良かったと。
それは小学4年生の翔子さんが咲太と会わないことで開かれる新たな世界線。蓄積は消えてしまい、咲太は麻衣さんともサブヒロイン達とも交差する確証なし。ってところを超えた二人。めでたしめでたし。


…そう思ってたのですが、これでどちらかを失うエンドはそれはそれでありだったのではないかと。

 “選択をすることで失うものがある”

小学生か中学生くらいで学んだわけです。しかも自分で手を下す残酷さ。
気軽にシュタインズゲート見つけられちゃご利益も霧散。誰も傷つかない優しい世界の住人のまま。{/netabare}


失う怖さを知っているという前提でこそ輝く劇場版の結末ではなかろうか。
まあアニメだから楽しめればOKです。及第点ゆうに超えてるし不満と言う程でもありません。



■(余談)あ!?既視感?

海の見える結婚式場で挙げた結婚式にいくつか参加したことあるけどここだっけ?

『SCAPES THE SUITE』だそうです。

ここだ!と思ったのだが俺行ったの『シーサイド リビエラ』だったような。ま、どうでもいいっす。


■されど麻衣先輩は麻衣先輩

{netabare}翔子さんが肉薄したのは事実です。
それでも終わってみれば麻衣先輩の圧倒的なヒロイン力にひれ伏す私がいました。

愛だよねぇ、愛{/netabare}



視聴時期:2020年2月 

-------
2020.04.22
《配点を修正》+0.1


2020.02.28 初稿
2020.04.22 配点修正
2020.09.22 タイトル修正

投稿 : 2024/11/09
♥ : 67
ネタバレ

101匹足利尊氏 さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

藤沢バタフライ・エフェクト

6月に本作を劇場鑑賞した帰り路……。

俺は長い間、自己責任論に蝕まれ、
自分がどうにか助かればそれで良いと言う人生を歩んで来たけれど、
このままじゃお前、いくらなんでも、もうダメだろう……。
との強烈な観念に襲われました。

寄付や募金なんて学校や職場の同調圧力に屈した時以外、
ほとんどろくに手を差し伸べてこなかった男が、
この映画をキッカケに俄に毎回少額ながらネットで寄付とかやり出している……。


本作の評価は?と聞かれれば、
劇場鑑賞後の時点だと、TVアニメ版からの流れを汲んだ良くできた続編映画。
原作未読組の私にとっては想定以上に内容の濃い展開が詰め込まれて、
一回観ただけだと、ちょっと理解が追い付かない&忙しいかも?……位の感想。

劇場鑑賞後の自分の心に起こった現象と作品との因果関係解明などの難題を前に、
長らく書きあぐねていた本作のレビューを年内投稿するため、
寒気強まる季節の威も借りて、先日、レンタル配信で再鑑賞しました。

二回目観て、限られた尺内に、複数の"思春期症候群”が絡まる複雑なシナリオを、
破綻なく成立させつつ、しっかりとキャラ総出演&見せ場あり。
相変わらず毒キツめの"青春ブタ野郎”ギャグ?(笑)も散りばめられた。

私の作品理解度も上昇し、素晴らしい続編映画に格上げされたものの、
やっぱり、TVアニメ版振り返りもOP主題歌も一切ないまま濃厚な本編に突入して行く、
事前予習必須のご新規さんお断り映画なんだよな……。
今年は単体の良作アニメ映画も豊富にある中で、
他の方に広く薦められるか?と言う観点からは優先順位は高くはならないよな……。
との感想は変わらず……。


けれど、私の人生に影響を与えた作品と言う意味では、
本作は今年ぶっちぎりのNo.1でした。

ほんの小さな心境の変化が世界に奇跡を起こすと信じることができた。
私の人生が切り替わるタイミングとかち合ったこと等を考慮しても、
本作のシナリオには、完成度に裏打ちされたパワーがあったのだと思います。


本シリーズの正ヒロイン・麻衣先輩は
TVアニメ版でもサブヒロイン回を経る度に"正妻力”が増していった印象ですが、
本劇場版のそれは極め付けと言って良いと思います。

レビュータイトルは2004年アメリカ映画『バタフライ・エフェクト』より。
「ブラジルで蝶が羽ばたくと、テキサスで竜巻が起こる」
小さな差異が大きな変化をもたらすカオス理論「バタフライ効果」をシナリオに取り込んだ、
野心的なSFスリラー映画。

私は主人公&ヒロインらのピンチを『バタフライ・エフェクト』の鑑賞記憶とも重ね合わせて、
ドキドキしながら本作を観ていましたが、
それだけに咲太&麻衣先輩の決断の凄まじさが倍増した感じ。


『バタフライ・エフェクト』では最後……(※重大なネタバレ)
{netabare} 主人公青年はヒロインと幸せになろうと過去をいじると、誰かが不幸になると悟る。
だからヒロインと親密になる過去をなかったことにして、皆を守る決断をする。
そして過去を改変する手段を処分し、ヒロインとは赤の他人として生きていく……。
と言う、運命を変えるリスクの重たさを思い知らされる、
かなり哀しい"ハッピーエンド”でした。{/netabare}


対して本作では最後……(※重大なネタバレ)
{netabare} 咲太は、翔子ちゃんの過去の心境を変えることで、
中学時代の咲太と翔子さんが出会わない未来を選択する。
これは『青ブタ』がここまで紡いできた物語を、
丸ごとリセットしてやり直すことを意味する。

決断前の未来も、咲太と麻衣先輩が二人でいられる割とマシな未来であったはずですが、
これを捨てて改変すれば、咲太と麻衣先輩が全く出会わない未来すらあり得る。
しかも、過去を変えた記憶は手段も含めてせいぜい夢で残り香として見る程度。
気に入らない未来だったからって、やり直しはまず出来ない。

それでも彼らは再び出会い、世界を善意で満たして、
正真正銘のハッピーエンドを掴み取ってみせました。

運命を変えると言う大きなリスクを取ってでも
咲太との未来を信じて決断した麻衣先輩マジ半端ないです。{/netabare}


麻衣先輩どんだけ咲太との運命の赤い糸に自信持ってるんですか!?
今後、"青春ブタ野郎”の眼前にどんな美少女が現れても
麻衣先輩にはまるで勝てる気がしませんw


6月の鑑賞時、夏を前に12月のシナリオなんて季節的にチョット……(苦笑)
と思ったのも事実w
けれどBD/DVD発売&配信レンタル等が始まったこの冬ならば、
おうちで聖夜のムード取り込みも含めて、季節の効果も見込めるはず。

私にとっては2010年代でも指折りの年末クリスマス映画としても、
心に残る作品になりそうです♪

投稿 : 2024/11/09
♥ : 45

75.7 3 ファンタジーで初恋なアニメランキング3位
ペンギン・ハイウェイ(アニメ映画)

2018年8月17日
★★★★☆ 3.8 (266)
1227人が棚に入れました
小学四年生の少年アオヤマ君は、一日一日、世界について学び、学んだことをノートに記録する。利口な上、毎日努力を怠らず勉強するので、大人になったときにどれほど偉くなっているか、見当もつかない。そんなアオヤマ君は、通っている歯科医院の“お姉さん”と仲がよく、“お姉さん”はオトナびた賢いアオヤマ君を、ちょっと生意気なところも含めかわいがっていた。ある日、アオヤマ君の住む郊外の街にペンギンが出現する。海のない住宅地に突如現れ、そして消えたペンギンたちは、いったいどこから来てどこへ行ったのか…。アオヤマ君はペンギンの謎を解くべく研究をはじめるのだった。そしてアオヤマ君は、“お姉さん”が投げたコーラの缶が、ペンギンに変身するのを目撃する。ポカンとするアオヤマ君に、笑顔のお姉さんが言った。「この謎を解いてごらん。どうだ、君にはできるか?」“お姉さん”とペンギンの関係とは? そしてこの謎は解けるのか?少し不思議で、一生忘れない、あの夏の物語。

声優・キャラクター
北香那、蒼井優、釘宮理恵、潘めぐみ、福井美樹、能登麻美子、久野美咲、西島秀俊、竹中直人
ネタバレ

shino さんの感想・評価

★★★★☆ 3.8

私たちはどこから来て、どこへ行くのか

スタジオコロリド制作。

石田祐康監督、待望の初長編作品。
ひと夏の不思議な体験を鮮やかに描く、
心弾む思春期ファンタジーの良品であろう。

主人公アオヤマ君は研究熱心で、
世界の不思議に興味津々、
日々学んでは、知の探究に励む。
少年特有の好奇心と冒険心も旺盛で、
気になるお姉さんのおっぱいにも、
多大な関心を持つどこにでもいる少年だ。
{netabare}突然、広場の空き地に現れたペンギンたち。
忘れる事の出来ない、ひと夏が始まる。{/netabare}

少年の視点で描かれる数多くの演出、
世界や異性に対する戸惑いと妄想こそ、
どこにでもある思春期の原風景なのだ。
ペンギンハイウェイとは何であろうか!?
{netabare}それは人が歩む、進化への道であり、
思春期から大人になるための道標だ。{/netabare}

ここでは2つの世界が衝突している。
{netabare}折りたたまれ亀裂が生じた世界の果てと、
成長の儀礼として、少年が歩む内的世界だ。{/netabare}
どこか村上春樹「海辺のカフカ」を想像する。

移ろいゆく記憶を、夏という季節に見出す。
それは美しい等式、解けない夏の方程式、
どれだけの冒険をして大人になるのだろう。

私たちは幾つになっても、道の途中なのだ。

投稿 : 2024/11/09
♥ : 63

イムラ さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

子供の時に図書館で読んだらはまりそう

<2019/6/9初投稿>

WOWOWで昨夜放送されてたの観たので、蒼井優結婚記念レビューです。

小4の理系の男の子を主人公としたジュブナイル・フィクション。

サイエンスのない方のファンタジーなので現象に理屈を求めても意味のない作りになっています。

大人が見てもそれなりに楽しめると思いますが、小学高学年〜思春期ぐらいまでに「小説」で読むと真価が発揮されるタイプではないでしょうか。

小学校の図書室によく置いてあるちょっと不思議な話。
それを森見登美彦テイストに大人でも楽しめるようにしました、という印象。

例えば「花田少年史」とかは、あれも子供を主人公としたファンタジーですが、視点は「読者」「視聴者」。
つまり読んだ人目線で作ってある。

本作はあくまで小4の主人公アオヤマくん目線。
なので年齢が近い人の方が楽しめるんじゃないかと。

そして、映像は素晴らしかったのですが、何が起きてるのかを映像と台詞だけで説明するのは少しむずかしかったのかな、という気も。

小説で、文字で、「アオヤマくん」になりきりながら、起きていることを理解し、その映像を想像して、読み進めていくと楽しさが広がっていく気がしました。

以下、感想。
・アオヤマくんのおっぱい好きが異常。
このまま偏執的な巨乳好きに成長しそうで将来が心配。
ところで巨乳好きな男の嫁さんや彼女って意外とそうでもないこと多いんですよね。

・お姉さんが魔性っぽい。
蒼井優だからかな。
それはそうと蒼井優さん、魅力的な演技でしたねえ。

・アオヤマくんの子供部屋。
あんなん最高だろ。子供としては。恵まれてる子供だ。

・アオヤマくんのおかあさん。
能登さんなんだけど、能登さんの子供ってうらやましいと真剣に思ってしまった 笑。
看病のシーンとかさ。
確か、割と最近出産されたんですよね。
生まれてきたお子さんがうらやましい(←自分でもおかしなこと書いてるって自覚はある)

・監督さんが「フミコの告白」の人。
へえ。そうなんだ。という感じ。
まだ作風は掴みきれてません。

以上です。

投稿 : 2024/11/09
♥ : 40

えりりん908 さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

愉快で不思議で、ちょっと切ないファンタジー

これからの季節にお勧めです!

科学的探究心が旺盛な、小学校4年生のアオヤマ君のひと夏の活躍を描く、
ミステリーのような、冒険譚のような、楽しくて、ちょっと不思議な味わいのお話しです。
いろいろ辻褄合わなくても全然かまいませんw そういうお話しじゃないって思うから。

小学生のくせに、大人ぶっていて、でも大人の女性の胸に興味津々で、
それを恥ずかしいと自覚するまでにも至ってない、二次性徴を迎える前で
恋とか愛とかも、当然知りもしないアオヤマ君。
潔い、というより、まだ性に目覚めていないから、
素直に「おっぱいが好きだ」って堂々と主張して悪びれもしない。
なんだかそんなところ、すごく可愛い!
きっと2~3年もしたら、自分の「お姉さん研究ノート」が、
死ぬほど恥ずかしくなって、
黒歴史として封印しちゃうんだろうなあww
ああ可愛い(^^)
わたしショタとか全然趣味じゃないですけど、
こんな、無自覚に背伸びして小理屈こねくり回してる子供がいたら!!
可愛くて堪らなくていじりまくりそう!

お姉さんもなんだかとっても素敵です。
奇麗なだけじゃなくて、キュートでファニーな、
それでいてちょっと謎もある、少年の目にも大人過ぎない、
ちょうど魅力的に映える感じで。
あと重要なファクターの、
お姉さんの胸の描き方が、いい意味でアニメっぽくなくて、
グロテスクな巨乳とかじゃなくて、ちゃんと普通に、女性の胸らしく、自然で綺麗な線で描かれているのがとってもナチュラルでいいって思います。

それと、サブヒロインになるのかな?
ハマモトさんもすごく、可愛いんです。
プライドは高いんだけど、子供らしく真っ直ぐに生きてて、
年相応に賢いのがとっても好感度高いです。

お話し自体は、ジブリっぽいっていうか、
トトロとポニョを足して二で割ったような感じで、
夏休みにファミリーで楽しめるように作られていて、
森見さんの原作なのに嫌味な感じが全然しなくて。
監督も、教えられるまで気付かなかったけど、
あの「フミコの告白」作った石田祐康さんなんですね。
初の長編商業作品で、ここまで出来るってすごい!

アニメ上級者の方にはちょっと物足りないかもですけど、
そんな方以外の、普通の人なら、
誰が観ても楽しめるんじゃないでしょうか。

アニメ初級者の私は、すごく楽しめました(*^▽^*)

投稿 : 2024/11/09
♥ : 40

68.8 4 ファンタジーで初恋なアニメランキング4位
打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?(アニメ映画)

2017年8月18日
★★★★☆ 3.3 (463)
1780人が棚に入れました
物語の舞台は、夏休みのある一日。花火大会をまえに「花火は横から見たら丸いのか?平たいのか?」の答えを求め、町の灯台から花火を見ようと計画する少年たち。一方、クラスのアイドル的存在・なずなに想い寄せる典道は、時間が巻き戻る不思議な体験のなかで、なずなから「かけおち」に誘われることに……。何度も繰り返す一日のなか、なずなと典道を待ち受ける運命は? そして、果たして花火は下から見ても、横から見ても丸いのか?

声優・キャラクター
広瀬すず、菅田将暉、宮野真守、松たか子、花澤香菜、浅沼晋太郎、豊永利行、梶裕貴
ネタバレ

shino さんの感想・評価

★★★★☆ 3.8

夏の日の少年少女

繰り返す、夏のある一日。
とある海辺の町。
花火大会を前に盛り上がる典道と友人たち。
花火って横から見ると丸いの!?平べったいの!?

90年代、新進気鋭の映像作家として名を上げた、
岩井俊二監督の同名実写映画にして出世作。

人生の選択の分岐点をテーマに、
1つの物語で2つの結末を描いています。
{netabare}「なぜ時間が巻き戻るのか」{/netabare}
これは物語を成功へ導く最も重要なファクターだ。

舞台は茂下町、風力発電機が立ち並び、
渡り鳥が羽を休める憩いの渚。
幻想的な夕景と海の上を走る電車。
美しい景観に圧倒されます。
上手く表現できない好きと言う感情。
思春期の少年少女に突きつけられる厳しい現実。
{netabare}「もう1度やり直せれば」と願った先に、
時間の巻き戻しという幻想的な奇跡が起こる。{/netabare}

これは典道が望んだ世界でしょうか?
僕にはヒロインなずなの世界にも思えます。

自転車で駆け下りる海辺の坂道。
飛び込んだプールの水飛沫と夜空に咲く花火。
数々の夏の風物詩が眩しい、
美しくも切ない余韻を残す夏の物語。

これは恋の物語ではなく、
思春期の試練と決別を描いたのではなかろうか。

花火が上がるとき、恋の奇跡が起きる。
涼やかな夏の物語、楽しんで下さい。

投稿 : 2024/11/09
♥ : 91
ネタバレ

明日は明日の風 さんの感想・評価

★★★★★ 4.3

名作ドラマのアニメ化…心揺さぶる青春恋愛ファンタジー

【視聴前】
この夏の楽しみ、それは終物語の続編とこの映画です。共通点は「シャフト制作」というところです。

岩井俊二の名を世に広めたことで知られるこのタイトル。もう20年以上前になるわけか…。衝撃だったのは主演の奥菜恵。こんな可愛い子がいるんだ…というくらいビックリしたのを覚えています。あれから…時は残酷であるの見本としか言いようがありません。

名作映画のアニメ化というと、時かけを思い出しますが、あれは原作ありでさらに中身は全く違うものになっています。これは作品をなぞりながらだというのでこれまでにはないパターンと言えるかもしれません。予告編見ましたが、絵がシャフトだなと感じます。というより、主人公、どこからどう見てもガハラさんだよね…。それもそのはず、キャラデザインは同じ人だった。作中、首を変な方向に曲げたら…。

新房×シャフトなので内容も絵も心配はしていません。自分好みの面白い作品のはずです。が、心配なのは中の人、主役の二人です。予告編ですでに「あれっ?」となっています。特に広瀬すず。すでにキャラデザインと声が合っていないし…。

【視聴後】
この映画を見る前にもう一度実写を見たいと思いレンタル探したけど、もう20年以上前の作品だけになかなか探しきれず…。諦めかけていた時、偶然にもスカパーの日本映画チャンネルで放映していたのでじっくり見ることができました。そしてこの作品を鑑賞。実写を丁寧にオマージュしているなというのが最初の感想でした。アニメ化にあたって、スタッフは実写を細かく分析して、アニメでも通じるところはそのままに、また、原作のイメージを壊さないことを念頭に置いていたのかなと思います。そして、その上で現代の言葉や風景、風俗に当てはめていたと感じました。面白かったのは{netabare}スラムダンクをワンピースにしていたのに、なぜか「観月ありさ」は残したところ。今なら「広瀬すず」でも良いじゃないかと思いますが、これはスタッフの遊び心か、なんなのか判りかねます。{/netabare}

名作と言われる原作ではなかなかアニメになりにくいです。あれは素の子供たちがそのままの姿で演じ、幻想的な部分になり勝ちなところは現実の描写で伝えようとしているとこが良いわけです。が、アニメにするならさらにプラスアルファが必要と思っておりました。そこをうまくファンタジーでまとめたと思います。{netabare}原作では典道となずなは駅舎から帰ることになります。ここからなずなが引っ越すのか残るのかは曖昧なままで終えることになります。アニメでは駅からが本番になっていきます。でも終わりは原作のように曖昧なままで終えるのですが…。{/netabare}それから原作と決定的に違うのは恋愛要素を強めた点。典道となずなの関係は原作では恋しているのかなんなのかをなずなの表現だけで想像させる作りになっています。{netabare}祐介と典道に水を掛けるシーンでのなずなの表情がまさにそれ。アニメでも見事に表現されていました。{/netabare}この辺りは「君の名は。」の影響が大きいような感じもしましたがさて…。

作画はきれいなシャフトという感じです。シャフトの不可思議な描写は控えめにしてます。感心したのはとにかく水の描写がきれいです。ホースからの水の出方が美しすぎて見とれました。それと、なずはどっからどう見てもガハラさんです。ガハラさん好きの自分が言うのだから間違いありません(苦笑)。シャフ度ぎりぎりに抑えた首の角度にしびれました。でも…中学一年生には見えない…。とはいえ、原作のなずなは小学6年生で奥菜恵だったからなぁ…あれも小学生には到底見えなかったし…。それと問題の中の人。広瀬すずは声質はなずなに合っていたと思います(視聴前の前言撤回します)。例え棒でも声が合っていれば納得してしまうので個人的にはOKです。心配していた典道は…う~ん、頑張っていたと思います。でも中学一年生の声ではないよね。周り固めたのがシャフトでお馴染みの方ばかりなので、劣ってしまうのは仕方ないです。

個人的にこの作品は気に入りました。シャフト好きな人(特にefのような作品が好きな人)には合うのではないかなと思います。できれば原作も見ておくとより楽しめるのではないかと思います。

投稿 : 2024/11/09
♥ : 43
ネタバレ

101匹足利尊氏 さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

蠱惑の球面

元ネタである岩井俊二監督のスペシャルテレビドラマは視聴済み。

球とは実に不思議な形をしています。
どの角度から見ても見える形は同じですが、
見えてる面は視点によって全部違う。

その上、光の加減まで考慮すると球はさらに神秘的。
特に例えばガラス玉のような透過性の高い球体ともなれば、
光の屈折まで加味されて見る視点によって輝き方が目まぐるしく変わる……。
そして、その透き通った球体は、あらゆる光を集めると共に、
球の境界を隔てた人々の視線や思念、願望をも惹き付け誘惑するのだ……。


本作は原作にもあった花火の見え方のウンチクによる好奇心刺激に加え、
シャフト作画によって全編に散りばめられた円柱、球形への違和感、興味。
それらが心を浮つかせる夏の空気、ヒロイン少女の魅惑的な美しさ等により加速され、
常識や倫理の壁をも超越して行く、真夏の青春アニメ映画。

主人公少年らと共に気持ちよくジャンプするには、
映像全体が醸すムードに憑かれることが必須で、ハードルはやや高めですが、
私としては夏に劇場鑑賞チャレンジした甲斐があった作品でした。



本作は単純に興味を持って観る。のとは別に色々な動機での鑑賞があり得る作品ですが、
以下、それぞれの立場からの見え方を想定してみると……。


①岩井俊二監督作のリメイクを期待して本作を観る。

……これは正直かなり失敗するリスクが高いと思われます(苦笑)

{netabare}私が思うに原作ドラマは脚本、シナリオ等により賞賛されているだけでなく、
90年代当時の子供の世界。その再現性によるノスタルジーにより、
年々、思い出としても美化され続けている作品。

(例えば{netabare}本アニメ映画だと少年宅でプレイされるゲームは『キラキラスターナイトDX』という
2016年発売のファミコン用新作レトロゲームという恐ろしく懐古狙いなマニアックぶりですがw
原作ドラマではスーパーファミコンの『スーパーマリオワールド』という大衆向け定番作 {/netabare})

それら当時の流行も取り込みつつ、しょーもない冗談や下ネタを言い合うw
ガキの会話あるあるな掛け合いが醸す、子供の世界にリアリティや説得力があります。
こうした子供の世界に背伸びしてる感を纏わせつつ、
大人の都合と対峙させることにより、物語の推進力と共感度をアップ。
さらに当時15歳の美少女だったヒロイン役・奥菜恵さんを画面に閉じ込めた希少性と相まって、
今なおタイムカプセルのような輝きを放ち続けている原作ドラマだと思います。

対して本作は後世、思い出となり得るような同時代性の強調は控えめ。
(例えば{netabare} スマホが出て来ない時点でタイムカプセルにはなり辛いですし、
松田聖子さんだの観月ありささんだの叫んでいる時点で
原作の時代に対するオマージュの方が勝っています{/netabare})

むしろ本作は花火の見え方というSFファンタジー世界展開の着火点により注目し、
そこからオリジナル要素も広げていくシャフト作品。

加えて本作では何故か主人公少年らを原作ドラマの小6から中1に設定変更していますが、
原作の掛け合いの流れも引きずっているためでしょうか?
少年少女たちの言動が今風でない感じがするだけでなく、
微妙に小学校卒業してない感じが、
原作ドラマ視聴後だと目につきやすく、それらがストレス要素になりかねません。{/netabare}

いずれにせよ、リメイク期待組とのキャッチボールは波乱含みのようです。

もしも原作ドラマ未見で、ドラマ観てから本作観に行こうと検討されている方がおられたら、
私としては是非、そのまま、よそ見をせずに映画館に直行することをオススメします。


②『君の名は。』川村元気氏のプロデュース作として、前年の感動再現を期待して観る。

……これも大分、失敗するリスクが高いと思われます(苦笑)

{netabare}特に『君の名は。』を気軽なエンタメ作品として楽しんだ方は、
それを期待して本作を観ると事故る可能性がいっそう高まると思われます。

『君の名は。』は何となく観ていても状況は説明してくれるライトな作品でありつつも、
深読みしても得るものがあるコアな作品でもあった、
間口の広いヒット作だったと私は考えていますが、

本作の場合は作画や表情、ちょっとした台詞の違いなどを深読みしに行かないと、
状況すらも把握し難く、物語の迷宮入りと共に、失意の途中下車に追い込まれかねません。

逆に些細な違和感から考察を巡らすことができる方なら価値を見出せると思います。{/netabare}


③シャフト、新房昭之監督のファンとして本作を観る。

……これはまだ割と期待できそうです。

{netabare} そもそも背景絵等が醸すムードが作品を牽引する構造である以上、
まず本作でも相変わらず癖がある作画、構図等に興味を持って鑑賞し続けることが、
作品と折り合うための必須条件。

何じゃ!?このワケわからん絵は~~wとなるか、
あっこれやっぱりシャフトだ(笑)イヌカレーだ(笑)とニヤニヤできるかは、
本作でも満足度を左右する重要な分岐点になると思われます。

但し作画レベルは背景画等については良好ですが、
人物描写、特にキャラ造形の安定度等については標準レベルなので、
至高の劇場版作画を求める等の過度なハードル上げはオススメできないと思います。{/netabare}



以上、色んな角度から長々と書いてしまいましたがw

簡潔にまとめると本作は普段あまりアニメを観ない層にはあまりオススメできませんが、
コアなアニメファンや、あにこれユーザ等には、
合う合わない、好き嫌いも含めて、是非、感想、考察を聞いてみたい作品だと思います。

例えば核心部分について、私見を述べると……

{netabare}あの夏、最後、典道は平行世界に飛翔したまま戻って来なくなった。
なずなは元の世界に戻って転校し、典道を待ち続けている……。
というのが私の解釈と言うより願望?ですが、如何でしょうか?

典道も平行世界から一応、戻っては来たけど……という見解が多そうかつ、
妥当性も高そうなラストではあったのですが……。
「もしも玉」と平行世界の妖しさに取り憑かれた私としては、
あっさり元の世界に戻って来るのは何か勿体ない感じもするんですよね……。{/netabare}

みなさんの評価、感想……お待ちしております♪

投稿 : 2024/11/09
♥ : 41
ページの先頭へ